刃牙シリーズが大好きな鴨です。板垣先生が描く世界観が好きすぎて、大ゴマのオンパレードでほとんど進展なく1話が終わっても許せてしまいます。ただ、戦闘の描写を「~はこう述懐する」とする例のアレは金輪際止めてほしいです。
さて、刃牙ファンの間では散々言われ尽くされてきたことですが、刃牙シリーズの登場人物には、「結局何だったの?」というキャラがわんさか登場するんですよね。持ち上げるだけ持ち上げておいて落とす手法を使うのは板垣先生だけではありませんが、それにしても扱いが酷すぎるキャラがいて、同情を禁じえません。
そんなわけで、今日は板垣先生にポイされた悲惨なキャラに着目して語り、同時に「期待はずれ度」と「かわいそう度」を5つ星で評価付けしたいと思います。
1.アレクサンダー・ガーレン
期待外れ度:★★★★☆
かわいそう度:★★★★☆
「グラップラー刃牙」の最大トーナメント編に登場したロシアのアマレス選手。天性の資質だけでレスリング界の頂点に君臨する怪物という設定。モデルは 「霊長類最強の男」と呼ばれたアレクサンドル・カレリンで、“掴まれた相手は投げを恐れてそのままフォール負けを選ぶ”という逸話は作中でも採用されています。
どんな扱いを受けたのか
好戦的な性格で、同じくロシア出身のセルゲイ・タクタロフをなぜかフルチン状態でボコボコにしたり、満身創痍の柴千春をいきなり天井に突き刺したり、隙をついて花山薫にスープレックスをかましたりと大暴れ。ジャック・ハンマーとの対戦前は、デモンストレーションと称して罪もないアナコンダを踏み殺し悦に入っていました。
対ジャック戦では、持ち前の身体能力を活かしてジャックを圧倒します。連載当時はジャックがボスキャラという明確な描写がなく、誰が決勝に進出してもおかしくなかったため、そのままガーレンが勝利するのかと思いきや、ジャックのドーピングが効き始めると形勢逆転。指を食いちぎられ、得意の投げも返されるとそのままフツーに敗北しました。
考察
物語の設定上、ガーレンが敗れることは仕方がありません。しかし、モデルであるカレリン以上の怪物エピソードを携えて登場したこと、負傷していたとはいえ柴千春と花山薫を瞬殺したことがアダとなり、ガーレンの噛ませ犬度が作中屈指のものになってしまいました。なんてったって、ガーレンがまともに勝利したのは罪もないアナコンダだけですからね。
かわいそうなのは、ジャック戦で噛ませ犬としての役割をまっとうしたのに、その後の最凶死刑囚編で再びシコルスキーの噛ませ犬役に抜擢されたこと。しかもジャックより遥かに劣るシコルスキーに手も足も出なかったようで……。ジャック戦の敗北を機に完全にヘタレキャラに転落してしまいました。板垣先生、酷すぎます。
2.天内悠(あまないゆう)
期待外れ度:★★☆
かわいそう度:★★★★☆
「グラップラー刃牙」の最大トーナメント編に登場。作中最強の範馬勇次郎に推薦される形で参戦しました。「戦いには愛こそが必要であり、人を喜ばせることと倒すことは表裏一体である」が持論。
いついかなるときも信念を貫く真面目な青年で、ジャガッタ・シャーマンが勇次郎の気まぐれで再起不能にされたときは、勇次郎に対し、「貴方のこういうところが大嫌いだ」と平手打ちを喰らわすほど。不意打ちとはいえオーガに一撃をいれる身体能力と肝の太さが評価されていました。
どんな扱いを受けたのか
あの勇次郎が一目置くだけあり、戦闘能力もスタイルも一級。長い手足や強靭な脚力を活かし、愚地独歩をあと一歩のところまで追い詰めます。
しかし、独歩がどうしても降参しないことが分かると、自分の勝利を認めてもらうよう周囲に哀願するという、刃牙世界では「フヌケ」扱いされる行動をとってしまい、ブチ切れた勇次郎に制裁を加えられ退場。勇次郎にも作者にも完全に愛想を尽かされたのか、その後は登場しません。生死不明。
考察
勇次郎は天内の性格をよく知らずに推薦したのでしょうか? 知っていたのなら、天内が最大トーナメントのような戦いの場を好まないことは予測できたはず。天内がそこまで追い詰められた姿を見たことがなかったせいかもしれませんが、それにしたって、己がイチオシしておいて気に入らなかったらポイって……。勇次郎の行動は、伏線を張ったものの回収するのが面倒になったから堂々と剥がしにかかる板垣先生そのものです。だからこそ素敵なのですが。
3.柳龍光(やなぎりゅうこう)
期待外れ度:★★★☆
かわいそう度:★★★☆
「バキ」の最凶死刑囚編に登場する暗殺拳の使い手。死刑囚5人のなかで唯一の日本人だからか、ボスキャラ的に扱われていました。
刃牙に完全勝利した数少ない一人であり、作中最強クラスの渋川剛気に対しても3勝0敗、刃牙&渋川組とのハンディキャップマッチにも勝利を収めています。
どんな扱いを受けたのか
輝かしい戦績を引っさげる柳さんでしたが、童貞を捨てただけで理不尽にパワーアップした刃牙に完膚なきまでに打ちのめされ、号泣。ただ、結果的に重症を負ったのは刃牙の方なので、VS 刃牙戦の勝者は判断が分かれるところかと。
セックスで強くなった刃牙のせいで人生の歯車が狂ったのか、夜の公園で本部以蔵に襲われ、遥か格下のはずの本部に右手を斬り落とされるという大惨敗を喫します。2人のバトルを見て柳の敗北は明白だと判断した勇次郎は、柳に負けを認めるよう忠告しますが、「勝敗を決める権利があるのは戦っている2人だけ」と正論で応戦。案の定、ブチ切れた勇次郎の強烈な裏拳を喰らって退場しました。
考察
渋川剛気に全戦全勝している事実は揺るぎなく、作中最強クラスであることは否めません。にもかかわらず上記のような仕打ちを受けたのは、板垣先生が死刑囚編に飽きてきたからでしょう。勇次郎を使って無理やり片付けた感ありあり。
4. 劉海王(りゅうかいおう)
期待外れ度:★★★★★
かわいそう度:★★★★★
「グラップラー刃牙」から登場する中国拳法家で、烈海王やドリアン海王の師匠。「バキ」の大擂台賽(だいらいたいさい)編では、海皇の称号を巡り選手として出場しました。齢100歳を超えるも現役バリバリであり、勇次郎が参戦すると聞いても絶対の自信を持っていました。烈やドリアンのお師匠さんということで弱いはずがなく、海王の中でもトップクラスの実力者であることは間違いありません。
どんな扱いを受けたのか
勇次郎を前にしてもまったく臆することなく、一体どんだけ強いんだこの爺さんとワクワクさせてくれましたが、いざゴングが鳴ると開始数秒で顔面の皮膚を剥がされ無残に敗北。
師をやられたことで激怒した烈海王が試合場に飛び込み、あわや勇次郎と一戦!というムードになりましたが、そんな烈を制止し、「わたしを…………侮辱する気かァッッ」と咆哮して再び勇次郎に向かっていきます。「これしきのことでギブアップすると思っているのか!」という怒りでしょう。キャリア100年をナメるなと。
しかし、あっさりと返り討ちにされそのまま失神。病院送りにされてしまいました。
考察
烈とドリアンの師匠というだけで期待したこちらも悪かったかもしれませんが、それにしたってパワーバランスがおかしすぎる。描写的には、烈は劉海王を尊敬していて、実力も認めているように見えるのですが。あまりにあっけなく敗北したことで烈に愛想を尽かされたのか、以降は登場せず、烈の師匠ポジションは郭海皇が務めることになります。引退したのかな……。
5.郭春成(かくしゅんせい)
期待外れ度:★★★☆
かわいそう度:★★☆
「バキ」の大擂台賽に登場する中国拳法家。郭海皇の息子。海王の称号はないものの、かなりの遣い手らしく、烈が春成と龍書文の名をあげたとき、勇次郎は 「狂獣春成と凶人書文かッッッ」と反応しています。郭海皇の遺伝子を受け継ぎ、勇次郎が注目するような格闘家ということで、刃牙との戦いが注目されました。
どんな扱いを受けたのか
粗暴で喧嘩っ早い性格が売り(?)の春成は、「共に偉大な父を持つ者同士の共有感(シンパシー)」を感じる刃牙に突っかかっていきますが、ふたを開けてみればものの2秒でKO負け。刃牙はこのとき心身共に絶好調で、調子に乗って勇次郎に喧嘩を吹っかけるほど勢いに乗っていましたから、相手が悪かったのかもしれません。
控室で目覚めた春成は、父・郭海皇に呆れられ、「 お前さァ・・・・ほんとにワシの血引いとる?」「武から身を引けい」と見放されてしまいます。
考察
毒から復活した刃牙の強さを知らしめるためにあてがわれた典型的な噛ませ犬。そんなキャラは刃牙世界にごまんといますが、同情するのは、彼の父親が郭海皇だということです。また、次でも紹介していますが、春成は範海王にも軽くあしらわれており、噛ませ犬同士の戦いでも敗北しています。
6.範海王(はんかいおう)
期待外れ度:★★★★★
かわいそう度:★★★★★
「バキ」の大擂台賽編に登場する中国の拳法家。複数の海王が集う大擂台賽にて、範海王と弟の李海王は何かと出番が多く、範馬勇次郎と肩を並べて会話するなど確実に別格扱いされていました。柳龍光の毒手に侵された刃牙の対戦相手が李海王だったことも、設定上、この兄弟をクローズアップするためであったことは明白です。
どんな扱いを受けたのか
勇次郎の「世界中にバラまかれた俺の種」発言もあることですし、範海王も「ジャック・範馬」と同じく勇次郎の息子に違いないと誰もが思ったはずですが、板垣先生の気が変わったのか、この伏線はぷっつりと切られてしまいます。
その後の範海王は見るも無残。大擂台賽が進行するに応じて出番が減っていき、中国勝ち残り軍 VS 日米勝ち残り軍編に移るとマホメド・アライJrに惨敗。戦いの最中で理屈をこね回した挙句負けるという、刃牙世界では最下級に位置するサムワン海王のような扱いを受けてしまいます。
考察
弟の敵討ちの相手は異母兄弟!……みたいな展開が用意されていたのかは分かりませんが、板垣先生が方向転換してしまったことでいきなり格下キャラに転落したのがかわいそすぎます。結局、強かったのか弱かったのかよく分からないんですよね。アライJr.に一蹴されたとはいえ、Jr.は渋川剛気と愚地独歩を(一度は)簡単にのすほどの実力者ですし。範海王の見せ場は、いきり立った郭春成の拳を軽く受け止めたシーンと、蹴りでりんごを華麗に切ってみせたシーンだけでした。
しかし、「ワケわかんねェ……」とダウンする兄の姿を見つめる李海王の表情は、刃牙シリーズ史上屈指の良ゴマなので、その意味で果たした役割は大きいです。
7.マホメド・アライJr.
期待外れ度:★★★★☆
かわいそう度:★★★★★
偉大なるボクサー・モハメド・アリをモデルにしたマホメド・アライの息子。初登場は「バキ」の最凶死刑囚編。父が成し得なかった全局面闘法「マホメド・アライ流拳法」を完成させた自他共に認める天才で、勇次郎の挑発ですら小ばかにして躱すほど大物臭を漂わせていました。なぜかエントリーしていた大擂台賽では、徐海王と範海王を一蹴。次の「神の子激突編」に移ると、渋川剛気と愚地独歩という作中屈指の遣い手でさえワンパンKOしてみせました。
どんな扱いを受けたのか
勢いに乗ってジャック・ハンマーに挑むまではよかったのですが、普通に返り討ちに遭ってしまいます。さらに後日、再戦を挑んできた達人&武神にもこっぴどく負け大怪我。このあたりから、神の子激突編はアライJr.の成長ストーリーであることに気付きます。
調子に乗りまくっていた青二才が、父親を含む「本物の漢たち」に小突き回されることで、刃牙最大のライバルに成長していく。事実、「スゴイね人体」荒療治を経てからは心身共にパワーアップし、渋川、独歩、猪狩のベテラン3名から「刃牙より強い」と言わしめるほど。ダメ押しとして、梢もどこかJr.寄りです。
……なのにJr.くん、結局は刃牙に2発で負けるんですよね。殺し合いに対する覚悟のなさが敗因なのですが、それにしたって2発って。2秒で負けた春成も悲惨ですが、少なくとも神の子激突編では主役扱いされていたJr.が瞬殺されるとは。
敗北後は、梢の胸を借りて泣きじゃくり、以降登場しません。ショックのあまり武の道から身を引いたのでしょうか。
考察
VSジャック戦は、本当はアライJr.が勝利するストーリーが用意されていたと思うのですが、実際に戦わせてみると、キャラがそうさせなかったのでしょう。ジャックは薄いながらも「範馬の血」が流れる漢ですから、ピクルほどのバックボーンがないと勝たせるわけにはいかなかったのでしょうね。ただ、いくらJr.の役割がなくなったからといって、刃牙の成長ぶりを見せつけるために瞬殺でポイするのはどうかと。
さいごに
劉海王と範海王が満点という評価を付けました!特に劉海王は、(範海王と違って)かなり強いはずなので、もう一度チャンスを上げてほしいです。範海王は無理でしょうね。