この時期になるとテンションが下がり気味になる鴨です。過去の出来事をたらればで後悔するなどまったく無意味な回想にふけることもあり、(ああ、こんなとき自分がクタジマ・トシトなら)と再びたらればで己の運命を呪うわけです。
そんな精神状態で駄文を垂れ流しながら生活していると、猛烈にあの『時空(とき)の旅人』がプレイしたくなってきました。20代の方はご存知ないですよね。1986年にケムコから発売されたファミコンソフトで、巷ではクソゲーとして悪名高いのですが、当時では珍しいマルチエンディングを採用するなど、画期的な挑戦がなされた歴史に名を残すゲームなんですよ。
ストーリーはこうです。
星暦392年、ネオ・トウキョウ政府の時空管理局員クタジマ・トシトは、 過去への逃亡者を追ってタイムマシンで戦国時代に入った。
彼の時代は、人類が核戦争というあやまちを犯した後であった。
彼は人類の歴史を平和なものに変えようと考え、逃亡者追跡という名目で過去の時代にワープするのだった。
クタジマ・トシトのご尊顔はこんな感じ。
私は、クタジマ-トシトだ。一度は、セドウド-ジンに妨害されたが、今度こそ素晴らしい歴史を作って見せるぞ。さあ、君の力を貸してくれ。
セドウド・ジンは、このゲームの原作に登場する人物のことで、前知識のない人にはなんのこっちゃわかりませんが、本作にまったく絡んでこないのでわからなくても大丈夫です。伏線を張っておいて1ミリも回収しないところにシナリオライターの男気を感じますね。
基本動作は「はい」「いいえ」を選ぶだけ
ゲームの目的は歴史を変えることです。キーパーソンとなる歴史的偉人を訪ね、会話を通して彼等の思想を理想的な方向へ導いていきます。といっても、基本的には質問されることに「はい」「いいえ」と答えていくだけでOK。したがって特に難しくはありませんが、偉人からの質問がカオスなことが多いので戸惑ってしまいます。
んなわけねーだろ w
味噌は無敵ってなに w
いや ほっとけよ w
いろいろ面倒になりそうな質問すんな w
偉人たちの性格がこれまで描かれてきた王道のものとは少し違うのも特徴です。明智光秀の兵に取り囲まれた信長は命乞いしてくるし、
カステラの美味しさに衝撃を受けた天草四郎は流通を止めようとたくらみます。
返答次第で変化する5つの歴史
偉人たちは、クタジマ・トシトの意見を鵜呑みにしてその後の行動を決定していき、それが歴史のベクトルに影響を与えます。
「戦争するか迷っている」「やれよ」 →『力の支配する歴史』へ
「金儲けするのは悪いことか」「いいんじゃない」 →『金の支配する歴史』へ
といったふうに歴史が作られていき、他に『食べ物の支配する歴史』『愛の支配する歴史』『正統な歴史』の3パターンがあります。主人公が望むものはこのどれでもない理想郷の歴史ですが、それぞれの歴史にエンディングが用意されているので、見たければその方向に誘導していきます。
しかし、エンディングはそう簡単に到達できるものではありません。前述のとおり、偉人たちは意味不な質問をしてくることに加え、返答が気に食わないと襲い掛かってくることがあるからです。
突然ブチ切れする偉人たち
偉人たちの質問に上手く返答できなかった場合、自分の進みたい歴史から外れたり、時空の歪でスタート地点(本能寺の変) に戻されたりするほか、機嫌を損ねた偉人たちに瞬殺されてしまうことが多々あります。そうなると即ゲームオーバー。もちコンティニューなし。
通常なら、ふざけんなこのクソゲー!となるところですが、偉人たちの沸点があまりに理不尽で唐突であること、ナレーションが笑いを誘っているとしか思えない文章であることから、イラつくどころかニヤけてきて再びプレイしたくなるという高度な仕掛けが用いられていることを当時の人は理解していなかったでしょう。
■近藤勇「私を食いしん坊だと思うか?」→「はい」↓
近藤局長がただの足りない人に
■織田信長「(光秀から)私を助けてくれないか?」→「いいえ」↓
武士とは思えぬ往生際が最悪な信長さん
■大塩平八郎「私に苦しんでる庶民を助けることができると思うか?」→「はい」↓
間違ってやっていいレベル超えすぎ w
■天草四郎「(マリア様よりいい女がいるなら)紹介してくれないか?」→「いいえ」↓
そんなことできんのかよ w
■家康&光成「(すましも味噌も)どちらもまずいというのか?」→「はい」↓
くだらない理由で窒息死 w
■西郷隆盛「私は単なる金持ちに見えるか?」→「はい」↓
即ギレにもほどがある w
■東条英機「私のお金が欲しいのか?」→「はい」↓
なにその表現 w
■東条英機「果物は嫌いか?」→「はい」↓
ひでき果物愛しすぎ w
■東条英機「(自分を噛んだ)犬を殺すか?」→「はい」↓
なぜか w
このように、バリエーション豊富なキレ方とナレーションで一工夫あるゲームオーバーを楽しむことができます。(ちなみにもっとも短気なのが東条英機)
そうした死線をくぐってたどり着く真のエンディングがこちら。
到達条件は、歴史を行き来した回数(通過画面数)が「51」になればOKというファミコンらしい設定。彼が求めた理想郷は、時代のキーパーソンを正しい方向に導く等ではなく、なんとなくタイムスリップしていたら偶然たどり着けたというオチが秀逸すぎて感涙です。
最後に
時空の旅人を思い出したら、過去の出来事や運命ついてくよくよ考えるのなんて無意味だということがわかりました。ありがとうクタジマ・トシト!そしてありがとうケムコさん!!
クソゲー、クソゲーと酷評されていますが、こんなに奥の深い原作レイプクソゲーは他にありません!誇るべき黒歴史として公式HPにも堂々と掲載すべき作品だと思います。