平井真也です。 スーパー戦隊シリーズと言えば、色分けされた5人の戦士が戦う、というイメージがあります。
設定によって、色分けがさほど重視されない作品もありますが、その場合でも、必ずキャラクターは色分けされています。
Wikipediaの「スーパー戦隊」の項目によると……
戦隊メンバーの個性はそれぞれに割り当てられた色によって表現されていた。これは「にぎやかな画面作りをしないと視聴者が離れてしまう」というテレビ番組制作者としての発想からであり、また放映開始時の1975年には日本の家庭へのカラーテレビ普及率が90%を越えていた背景も寄与している。
とのこと。
レッドは熱血漢のリーダー、ブルーはクールな二枚目、ピンクはヒロイン……と、色によってだいたいキャラクターのパターンみたいなものも見えてきますよね。
そういうことを考えていると、イメージされるのはやはり、キレンジャーでしょう。
特撮にとくに詳しくない方も、キレンジャーのイメージはぱっと浮かんでくるのでは?
ちょっと小太りのコメディリリーフ。気は優しくて力持ち。カレーが大好き。キレンジャーが確立したイメージは、その後も、「戦隊のイエロー」の原型として受け継がれ……
……いやいや、ちょっと待ってください。実は「そんなイエローって(ほぼ)キレンジャーだけ」って知ってました?
戦隊のイエローは、レッドやピンクに比べると、「こういうキャラだろう」という予測ができないカラーなんです。
歴代イエローたちはかなりバリエーション豊か
「レッドがおおむねリーダーで熱血タイプ」というのはかなりの作品に共通するのですが、イエローについては、キャラクターがかなりバリエーション豊かなんです。強いて言えば、パワーファイター型が多いかなとも思うのですが、ほぼ半数は女性ですし。
スーパー戦隊39作のうち、イエローのメンバーがいるのは35作(名称にイエローを含まないが、スーツが黄色い人は数えています)。
中には、キレンジャーに近いイメージの人もいるにはいます。
けれど、イケメン枠のイエローもいる。
そして女性のイエロー。ピンクが、正統派のヒロインキャラであることが多いので、2人目の女性メンバーは、活発なイメージだったりして、戦隊に華やかな彩りを添えてくれます。
本当は、心に残る歴代イエローのみなさん35名について全員語りたい、特にデカイエローについて3時間くらい語りたいところなのですが、あえて絞り込んで、以下は、『超電子バイオマン』のイエローフォーについて語りたいと思います。
イエローフォー~衝撃のトラウマヒロイン
イエローフォーこと小泉ミカは、スーパー戦隊シリーズ第8作『超電子バイオマン』(1984年)に登場。女性が演じた初めてのイエローで、5人のうち女性が2人になったのも、このバイオマンからです。
気の強い行動派の女性カメラマンという設定でした。前述したとおり、女性イエローはピンクとの差別化のために、ボーイッシュな雰囲気になることが多く、キレンジャーが男性イエローの原型だとすれば、イエローフォーは女性イエローの原点になったキャラクターと言えそうです。
……しかし、このイエローフォー、個人的にはかなりのトラウマ的存在。
なにがショックって、作中で亡くなってしまうのです。刑事ドラマなら殉職もありですが、いちおう子ども向けのヒーロー番組で、レギュラーメンバーのひとり、しかも女性が、敵に殺されるって、かなりの衝撃ですよ。
衝撃のエピソードの内容を紹介しておきましょう。
第10話『さよならイエロー』。このサブタイトルがすでに出オチなんですが、昭和の特撮はえてしてこういうことがあります。
バイオマンが特訓(←これもまた昭和感)に打ち込んでいると、敵に襲撃されます。それで、イエローが敵のもつ光線銃に撃たれてしまう。この銃、その名も「バイオキラーガン」といい、「反バイオ粒子」なるエネルギーでバイオマンを倒すためにつくられた敵の新兵器でした。
バイオマンというのは、バイオ粒子っていうエネルギーによってパワーを得ているんですが、反バイオ粒子とやらによってこれが失われてしまうんですね。しかしイエローは、バイオキラーガンの反バイオ粒子が有限であることに気づき、わざと自分ばかりが撃たれて反バイオ粒子を使い切らせます。そのためイエローはどんどん弱ってゆき、敵を撃退したはいいものの、自身は息絶えてしまうのでした。
反バイオ粒子によって、徐々に弱っていき、イエローフォーが苦しむ姿は、子ども心にかなりのトラウマ。直接的な攻撃で斬られたり爆発したりして殺されるんじゃなくて、じわじわ死んでいったというのがね、すごく陰惨な感じがして。
あげくに、その回のラストがこれです↓。
弔われてるwww しかも変身後の姿のままwwwww
今観ると「シュールwww」以外の感想が出てきませんが、当時は、「うわああああああああああ」です。
ちなみにイエローフォーは、超電子ホログラフィーという、空中に映像を投影する能力をもつのですが、最後、亡くなったはずの彼女からホログラフィーが投射され、そこには在りし日のイエローの姿が……
それを見た仲間が、「別れだ。イエローがさよならを言ってるんだ」みたいなことを言うんです。いいシーンだとは思うのですが、当時はそれどころではありませんでした。
バイオマンはこのエピソードによって4人になってしまい……、次の回で、2代目が選ばれるというストーリーになります。
ところで、実は、キレンジャーも、交代しています。初代のキレンジャー、カレー好きの大岩大太が、栄転(!)でゴレンジャーを辞めることになり、2代目が就任したものの、2代目キレンジャーが殉職し、初代が復帰するというくだりがあります。
つまり、イエローが死んだのは2人目……!
スーパー戦隊の長い歴史の中で、殉職メンバーは他にもいなくもないのですが、クライマックスにまで至らないストーリーの途中で、レギュラーメンバーの突然の死が描かれたのはイエローだけだと思います。
突然の死はだいたい大人の事情のせい
後に知ったのですが、イエローフォーの突然の死は、演じていた女優さんが突然、失踪して連絡がとれなくなり、降板したためだったということです。
そのため、上記のエピソードも、最初から最後まで変身したまま、一切、素顔のシーンがないのはそのためで、声は別人の吹き替え。当時もなんとなく不自然な印象は受けていましたが、そういう大人の事情だったんですね。そう思えば、ラストの、本人の映像が流れるシーンは、文字通り、スタッフからの別れのメッセージだったのかもしれません。
そしてキレンジャーの交代劇も、初代の俳優さんのスケジュールの都合だったということです。一年間という長い放送期間をもつ特撮作品では、ときどき、こういう大人の事情によってストーリーが左右されてしまうことがあります……。
小太りかと思えばイケメンも女性もおり、ときには殉職することもある、「戦隊のイエロー」は、作品ごとに何がどうなるかわからない、いわば「要注意」のポジションと言えましょう。