LCCと大手航空会社の違いや選び方を専門家が解説!航空会社の選び方徹底ガイド
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2007年3月、日本に初就航したLCC(Low Cost Carrier:ローコストキャリア)。翌年には国土交通省が「日本発の国際航空運賃の下限撤廃」を行い、この規制緩和に後押しされる形で浸透してきました。
しかし海外に比べると、「安全なの?」「どうして安いの?」など、まだまだ不安の声が多く聞かれています。
そんなみなさんの不安を解消すべく、LCCの賢い使い方やLCCと大手航空会社の違いについてなど、気になる疑問をLCC専門家の五十嵐貴文さんにぶつけてみました。

- LCC専門家 五十嵐 貴文さん
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12年間の報道ディレクターを経て、2016年4月に独立。取材力と行動力を生かして、LCCや格安SIMについて綴られたブログ「いがモバ」は開設後、わずか1年半で月間最大45万PVの人気メディアに。
現在は、日本初のLCC専門総合ポータルサイト「LCC STYLE」の編集長・チーフプロデューサーを務めるジャーナリストとして活躍中。LCC STYLE https://www.lccstyle.com/
そもそもLCCって、どうして安いんですか?
- 手厚いサービスを簡略化することで実現しています。
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そもそもLCCという名前は、Low Cost Carrierを略したもの。「日本発の国際航空運賃の下限撤廃」の規制緩和が行われてから、日本の空をとりまく環境が大きく変わりました。価格の下限が撤廃されたことにより、従来の航空会社が提供してきた手厚いサービスを簡略化し、低価格で航空券を販売するLCCのビジネスモデルが可能になりました。では、簡略化されたサービスとはどのようなものがあるのでしょうか。具体的には、次の4つが挙げられます。
1.機内食やドリンクなどを有料化
搭乗後、当たり前のように提供されていた機内食やドリンクを基本、有料にすることで、運賃の値下げを実現。ほかにも新聞や毛布、預け荷物が有料になるケースも。
2.深夜早朝便の安い時間帯を活用
夜間に空港に駐機することで、リーズナブルな価格を実現。深夜早朝便の料金は比較的安いので、少しでも安く移動したいという人にはオススメです。
3.ネット予約で人件費を削減
24時間インターネット経由で予約するのが基本。ITシステムを利用した予約システムを利用することで、通常、予約時にかかる人件費を削減して、運賃の値下げへとつなげています。
4.飛行機の使用機材を統一
大手航空会社は、大小さまざまな大きさの航空機を所有していますが、LCCでは飛行機の機材を統一。そうすることで乗務員の訓練や整備の効率化を図り、ムダなコストをカットしています。
LCCと従来の航空会社、チケット購入や搭乗手続きなど事務面で違いは?
- LCCはネット購入が基本。航空会社は電話予約も。
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LCCではインターネット経由での購入が基本。一方、航空会社は電話などでも受け付けています。また搭乗手続きでは、従来の航空会社は「QRコード」を発行して搭乗するというサービスを提供していますが、LCCではシステム運用にかけるコストを節約するためには導入していない会社が多いです。
LCCでは搭乗手続きの締め切り時間が早いって本当ですか?
- 本当です。事前に締め切り時間の確認を忘れずに。
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LCCの国内線チェックインの締め切り時間は出発30~35分前で、ANAやJALのチェックインカウンターは出発20分前と、LCCの締め切り時間が早いので、大手航空会社と同じような感覚で空港に向かうと乗れないケースがあります。
では、どうしてLCCの締め切り時間が早いのでしょうか。LCCでは1つの飛行機を無駄なく飛ばしているため、空港に駐機している時間が限られています。定時運航しないと、次の便への影響が出てしまうため、チェックインの締め切り時間も早くなっています。
LCCでは手荷物の持ち込みに制限がありますか?
- 会社ごとに制限は異なりますので、事前に確認を。
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機内に持ち込む手荷物には、LCC、大手航空会社、いずれも制限があります。ちなみにLCCと大手航空会社の持ち込み制限をご紹介しましょう。
【LCC】
春秋航空日本5キロ、ジェットスター・ジャパン7キロ、ピーチ・アビエーション10キロ、バニラエア10キロ
【大手航空会社】
JAL/ANA 10キロ
この制限サイズは、搭乗する航空機の棚のスペースに合わせて決まっているので、LCCだから大手航空会社だからということでの大きな違いはありません。ただLCCでは預け荷物が有料の場合が多いので、大きな荷物はチェックインカウンターや搭乗ゲートで厳しくチェックされます。
LCCは座席の間隔、スペースが狭いと言われていますが、実際はどうなのでしょうか。
- 前後の間隔は狭め、横は大手航空会社と変わりません。
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LCCの場合、1つの飛行機により多くの乗客を乗せるために、前後の間隔が少し狭くなっています。定員ベースで比較してみると、違いがよくわかります。
▽まずはボーイング737-800で比較
【LCC】
春秋航空日本…座席数189席【大手航空会社】
JAL、JTA…クラスJ20 普通席145 合計165席
とLCCに比べて大手航空会社は24席少ないので、その分、間隔は広くなります。▽次にエアバスA320で比較
【LCC】
ジェットスター・ジャパン…180席【大手航空会社】
ANA…166席
とLCCに比べて大手航空会社は21席少ないので、その分、間隔は広くなります。
飛行機の横幅と座席の大きさはほぼ同じ大きさですが、前後の間隔が異なります。■前後の間隔をエアバスA320で比べてみると、
ジェットスター、ピーチ、バニラエア…74cm
と各社同じ間隔となっており、座席の形状や機体の年式によって若干異なるものの、175cmの男性で膝前に握りこぶし1個程度の広さがあります。【大手航空会社】
JAL…78.7cm
LCCと大手航空会社で比べてみると、4.7cmの間隔の差があることがわかります。
LCCは遅れや欠航が多いイメージがあるが、本当!?
- 欠航率は1%と低いが、多少の遅れは多い。
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欠航が多いというイメージは間違いです。実はLCCの欠航率は1%前後と低く、大手航空会社と変わりません。ただ1つの飛行機を使いまわすという理由から、定時運航率は大手航空会社よりも低いというのは事実です。
ちなみに欠航・遅延した場合、大手航空会社では振替便を用意するのに対して、LCCでは自社に原因がある場合は用意するものの、天候などによる場合の振替は自己責任となってしまうという違いがあります。
そのため、万が一に備えて、オプションの保険に入るか、遅延保障のあるクレジットカードを持つのがオススメです。また国内の場合、夏の台風シーズンや冬の吹雪など、ある程度、天候不良が予測される場合、その時期にLCCを利用するのを避け、リスクヘッジを行うという方法もあります。またLCC専用の保険もあるので、利用する回数が多い人は加入するのがオススメです。
LCCは飛行中、揺れが大きいというのは本当ですか?
- 気象条件によって気流の影響を受けますが、小型機だから一概に揺れが大きいとは言えません。
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LCCの場合、使用している飛行機が「ボーイング737型」「エアバス320型」という小型機になります。そのため、気象条件によって、気流の影響を受けやすいということは考えられます。
しかし小型機が揺れやすく、大型機が揺れにくいというのは、その時々の気象条件によるので一概には言えません。ちなみにどの航空会社もなるべく揺れにくいルートを通るように日々、努力しています。
LCCは接客態度の評判が良くないという声がありますが…。
- LCCや大手航空会社に関係なく、会社それぞれで接客方針が異なります。
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LCC、大手航空で違うというよりも、会社それぞれの接客方針が大きく影響しています。例えば、ジェットスター・ジャパンでは親会社であるカンタス航空の教育を受け、客室乗務員は安全を守るために、手荷物の収納状態やシートベルトの着用について厳しくチェックしているため、声掛けする回数も多くなります。
また、LCCでは大手航空会社の出身者が教官を務めているケースも多く、接客品質も日々向上しつつあります。LCC各社はサービス改善へ利用者のフィードバックも求めているので、フライト中に感じた不満や改善点はぜひコールセンターやメールなどで伝えてみてください。
ツアーでLCCを利用する場合、気を付けるべきこと、トラブルが起こった際の対応などはどうすればいいのか教えてください。
- 欠航保証の内容を確認して、保証がなければ保険加入も検討してください。
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ツアーの場合、欠航保証がどうなっているのか、事前にチェックをしてください。万が一、トラブルが発生した場合には、旅行会社に連絡して、対応してもらいます。しかしその時にも振替できる便が少ないことがありますので注意が必要です。
LCCの国内線と国外線とで、何か差はありますか? 気を付ける点は?
- 国際線では必ずしも日本語が話せるとは限りません。
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国内外で大きな違いはありませんが、国際線で外資系LCCの場合、客室乗務員が必ずしも日本語を話せるとは限りません。そのため、入国カードの書き方などは事前にメモしていくのがオススメです。
またLCCでは機内のドリンクが有料のエアラインが多いので、薬を飲む場合は自分で飲み物を用意しておきましょう。小さなお子さんがいる場合、粉ミルクのためのお湯は提供してくれる場合もあるので、事前に相談しておきましょう。
LCCは時間的に余裕がある若者向きと言われることも。その点はどう思われますか?
- 時間に余裕がある人向きという点では若者向きかもしれませんが、特に年齢は関係ないと思います。
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LCCは若干、大手航空会社より遅延することが多いという点から、ビジネスでの利用はまだあまりオススメできません。ですが、「予約変更がいつでも可能」なジェットスター・ジャパンのビジネス向け運賃が登場するなど、ビジネス面での利用環境も整いつつあります。
また体力面で不安のあるお年寄りや障がいを持った方がLCCを利用する場合、LCCも大手航空会社と同様に受け入れの訓練を受けているので(利用する空港の設備を事前確認・連絡を)、必ずしも若者向きの交通手段だとは思いません。
往復共にLCCを利用する必要はなく、時間的に余裕がある片道のどこらかをLCCにして、一方を新幹線もしくは大手航空会社を利用するという賢い使い方もあります。
LCCで一番、コスパのいいオススメ路線を教えてください。
- 競争が激しい路線ほど、値段も下がります。成田~関空、成田~千歳などが狙い目です。
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空席状況によって、運賃が変動するLCC。競争が激しい路線ほど、運賃は安くなります。例えば、成田~関空(4社)、成田~新千歳(3社)などは、料金が安く、狙い目路線と言えます。また、2017年はバリ島やハワイなど、新しく開設する路線ではキャンペーンを打っていることも多く、運賃も安いので要チェック。毎週金曜日など週末にキャンペーンを行う会社も多いようです。
大手航空会社がLCCとの間を埋める「MCC」的ブランドを立ち上げるなど、新たな動きがありますが、今後のLCCの業界動向について教えてください。
- プレミアムLCCの登場で、競争の激化が予想されます。
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LCCの競争が激化している東南アジアでは、既にLCC、大手航空会社の中間のポジションを取るエアラインの人気が高まり始めています。
私はこれらの会社を総称して、「プレミアムLCC」と呼んでいます。具体的には、マリンドエアやエアソウル、スクートもある意味ではプレミアムLCCと位置付けできるでしょう。
また、東南アジアでは、LCCでも預け荷物が一定の重さまで無料のエアラインが多くなりつつあるため、巨大LCCグループのエアアジアも対抗して預け荷物などの付帯サービスの値下げキャンペーンを行ったりしています。
またバニラエアでは低価格を維持しながら、高サービスを提供する方針を新たに掲げ、ピーチでは独自の価値を生み出して提供するなど、LCC各社がそれぞれの道を模索し始めています。
大手航空会社の中ではサービスを削減して、LCC並みの低運賃を実現する会社も出てきており、一層、利用者の奪い合いが激化するでしょう。
また長距離を飛ばせる大型機を導入するLCCも増えているので、バリ島やハワイ、今後はアメリカ本土にも行けるようになるでしょう。LCCは“安かろう、悪かろう”というイメージから、食わず嫌いの人も多いかもしれません。かくいう私もかつては大手航空会社を利用するマイラーでした。ですがいざ乗ってみると、快適ですし、2~3時間の移動なら間隔の狭さもそれほど気になりません。ぜひみなさんにも上手にLCCを利用して、リーズナブルにステキな旅を実現していただきたいです。
LCCは貧乏旅行の手段ではなく、賢く利用するのが大事
LCCの日本での浸透はまだまだこれから、という印象があります。しかし賢く旅をしたい方は絶対に利用しない手はありません。今回、五十嵐さんのインタビューで一番印象に残ったのは、「僕はバックパッカーではありませんし、安い旅をしたいわけではありません」という一言。以前、五十嵐さんは大手航空会社のマイレージを貯めるマイラーで、会員のステージを維持するために五十嵐さんご自身も多くの投資をしていたといいます。ですが、ある時LCCを利用してリーズナブルな料金で大手航空会社とそれほど遜色のないサービスを受けられると知った瞬間、今までの価値観はガラガラと崩れ去ったそうで、「どうして今まで自分は、LCCを利用しなかったのか」と愕然としたそうです。
そしてLCCの特徴を知り利用し、移動の料金を安く抑えることで、旅先で食事に費用をかけたり、いい宿に泊まったりすることができるようになったと言います。ぜひみなさんも自分に合った賢い使い方を見つけてくださいね!
みん評スタッフの総評
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Q&Aでも触れたように格安航空だからといってサービスの質が低いとは限りません。また、LCCならではの使い勝手については事前によく勉強しておくことが大切。そのうえで、遅延は絶対避けたいなどの確実性を求める場合は大手航空を選ぶなど、ユーザー側の心構えも、航空会社を快適に利用するためには必要なことではないでしょうか。
LCCと大手航空、そしてそれぞれの航空会社のことをよく知って、上手に利用していきたいものです。ランキングの口コミ情報にある、生の声もぜひ参考にしてみてください。